2015年7月4日土曜日

第80回島根大学ミュージアム市民講座「『出雲国風土記』にみる山の信仰」を開催しました。

 本日午後、第80回島根大学ミュージアム市民講座「『出雲国風土記』にみる山の信仰」を開催しました。記念すべき第80回目の講師は、島根大学のOBでもある西尾克己先生(大田市教育委員会(石見銀山世界遺産センター))でした。今回は、出雲地域における古代人の山に対する信仰についてのお話でした。

 奈良時代に編纂された『出雲国風土記』によれば、出雲国内には、多くの山に対する記載がなされています。なかでも、宍道湖周辺には、4つのカムナビ山(神が鎮まる山)が記されています。

 このうち、楯縫郡のカムナビ山である大船山では、多伎都比古命とされる石神に雨乞いをすると必ず雨が降ると記述されています。40年以上前、島根大学教育学部で講義をされていた、『出雲国風土記』研究の権威である加藤義成先生は、現地での踏査によって、この石神が大船山の北側稜線付近にある烏帽子岩であることをつきとめられました。

 加藤先生の講義を聴講されていた西尾先生も、その後、現地を踏査され、烏帽子岩の下方の滝や周辺の大岩などで古墳時代の土師器の破片を採集されました。山奥の滝や岩から、こうした土器が出土することは、特別な祭祀行為が行われていたことを窺わせます。

 このように、『出雲国風土記』が現存するおかげで、奈良時代における祭祀の対象となった神の名前、祭祀の目的などを具体的に知ることができます。さらに、こうした場所での土器の出土によって、実際の祭祀行為が古墳時代まで数百年ほどさかのぼることも分かったわけです。1000数百年も前の信仰の実態を知ることはきわめて困難なことですが、出雲地域は、文献と考古資料によって、古代人の観念領域にもアプローチすることができる、きわめて稀有なフィールドであるといえるでしょう。

 また、講座でのエピソードのなかで、本学での加藤義成先生の講義が、わが国を代表する祭祀遺跡の発見につながったことを知りました。地域に根ざした学問の府である島根大学の存在意義を改めて認識することができました。

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