2015年8月29日土曜日

第81回ミュージアム講座「山・川と古代人の信仰」(まつえ市民大学連携講座)を開催しました。

 本日午後、第81回ミュージアム講座「山・川と古代人の信仰」(まつえ市民大学連携講座)を開催しました。
 この講座は、平成27年度島根大学ミュージアム市民講座第1ステージ「山と川をめぐる自然史と文化史」の最終回になります。今回の講師は、当館の会下和宏准教授でした。

 まず、文化人類学者サーリンズの言葉を引用し、人間社会にとって、神や神話、儀礼の実施が、社会の結合力を高めるうえで重要であるという説明がありました。そして、そうした視点から島根県内にある山や川と祭祀の様々な事例について、具体的な解説がありました。
 奈良時代の『出雲国風土記』に、秋鹿郡の神名火山(カムナビ山は、神のいます山)と記述されている松江市朝日山には、麓に佐太神社、山頂付近に朝日寺などの社寺がみられます。また麓や周囲には、弥生時代の青銅器埋納遺跡や古墳、琴が出土した古墳時代の祭祀遺跡などが存在しています。また、鹿島町古浦集落では、朝日山から採ってきた木を正月の歳棚飾りに使ったり、朝日山山頂で雨乞いの祈祷をしたりするなどの民俗事例がみられ、朝日山に対する信仰をうかがうことができます。
 また、松江市八雲町の雨乞山を遥拝できる前田遺跡では、古墳時代の琴や勾玉などが出土しています。ここでも山が見える場所で祭祀を行っていたことがうかがえます。
 『出雲国風土記』に意宇郡の神名備野とある松江市茶臼山でも、山を遥拝できる場所に山代二子塚古墳などの古墳が分布しており、山を意識した場所に古墳が造られたことがうかがえます。また、少し離れた丘陵上に3重環濠をめぐらせた弥生時代の田和山遺跡からは、茶臼山を望むことができ、推測の域を出ないものの何らかの関連があるのではないかという仮説も出されました。
 楯縫郡の神名備山である出雲市大船山では、『出雲国風土記』に多伎都比古命の御魂とされる大岩があると書かれています。現在の鳥帽子岩と推定されるこの大岩で雨乞いをすると必ず雨が降ると記述されており、周囲からは、弥生時代や古墳時代の土器も見つかっています。奈良時代をさかのぼる時代から、岩の周囲で祭祀が行われていたことが推測されます。
 大田市三瓶山については、山頂で雨乞い祈願をしたり、山頂付近の湧水を集落の水田の水口に注いだりする民俗事例があります。江津市桜江町の甘南備寺山では、盆花をこの山から採ったり、カリイシ(借石)という小石を山から拾って出征の際、持参していたという事例がみられます。
 また、石見国で亡くなったとされる歌人・柿本人麻呂の作品をはじめとした『万葉集』の挽歌などを分析すると、古代人は、死ぬと霊魂が山や天など高い場所に行くという他界観をもっていたようです。

 以上のような山に関わる遺跡や民俗事例から、古代人にとって山とは、水霊・穀霊・祖霊が宿る場所であると認識されていたようです。山がランドマークとなりやすいという景観上の理由や田畑を潤す水の源であったという認識がこうした観念の形成と関連していたのかもしれません。
 
 10月からは新シリーズ「遺跡から探る『古代出雲』の成り立ち」が始まります!ひきつづき、よろしくお願い致します。

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