2016年7月20日水曜日

田所太郎「松江高校のころ」

 NHKドラマ「とと姉ちゃん」に登場する五反田一郎のモデルといわれる田所太郎が亡くなった翌年、彼の著作を集めた『戦後出版の系譜』(日本エディタースクール、1976年)という本が出版されています。
 このなかに、1967年に書かれた「松江高校のころ」という文章があります。

 「きみは理性というものを失っているのか」

 既に1年留年し、さらに出席日数が足りず、中退寸前だった高校生の田所太郎に向かって、副保証人(担任)の原弘二郎教授が放った言葉です。

 東京から松江高校(現・島根大学)に進学した田所は、松江城濠端の小泉八雲旧居近くにある一軒家を借りて住んでいました。当時は、ろくに学校にも行かず、家に引きこもって、イワシのミリン干しをつまみに、出雲銘酒「李白」を飲んでいたと本人が述懐しています。

 原教授は、あと1日の欠席で退学になる田所に対して、懇々と彼の無軌道ぶりを改めるよう諭しました。田所は、原教授の言葉よりも、こうした先生の真摯な態度のなかに、抗しきれないものを感じ、それからは1分の遅刻もなく登校、各科目で満点をとって、無事卒業したそうです。

 今も昔も、学校に出てこない学生はいるようです。そして、原教授のように、学生のことを親身に思いやる、面倒見のよい先生は、今も島根大学のなかにたくさんいらっしゃると思います。

 なお、田所太郎の恩師・原弘二郎教授は、昭和5年から昭和28年まで、松江高校と島根大学で西洋近代史の教鞭をとっておられます。
 そして、戦後、昭和23年頃島根大学旧奥谷宿舎(旧制松江高校外国人宿舎)にも暮らしていました。

 現在、この島根大学旧奥谷宿舎を会場にして、ミニ企画展「旧制松江高校出身の異才編集者 花森安治と田所太郎」を開催しています。こうした場所で田所太郎の展示会が開催できることに、何かの縁を感じます。
田所太郎『戦後出版の系譜』日本エディタースクール、1976年
http://museum.shimane-u.ac.jp/okudani.html
國登録文化財・島根大学旧奥谷宿舎(旧制松江高校外国人宿舎)

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