花森安治装本『旧制松高物語』

 写真は、朝日新聞松江支局編『旧制松高物語』今井書店 1968年の表紙です。
装本は、花森安治、表紙の下駄のイラストも花森によるものです。シンプルかつ洗練された仕上がりです。
『旧制松高物語』 B6版
この本のなかで、花森の恋をとりもった加藤恂二郎教授のエピソードがでてきます。
 昭和8年も押し迫った夜更け、前年度に卒業し、東大に進んだ花森が、教授の家を訪ねたそうです。教授が「どうした」と尋ねると、松江の呉服屋の娘さんと恋愛しているのだが、先方の親が結婚に反対しているといいます。そこで、教授は、ハオリ、ハカマに身を固めて、人力車で呉服屋に乗り込みました。そして、一も二もなく、結婚を認めさせたそうです。
 花森以外の卒業生も、教授を慕って、しばしば自宅に訪れていました。教授は、教え子の孫を膝に抱いて、「お前たちの最大傑作である」とご満悦だったそうです。
 松江高校の教授と生徒が、信頼関係で結ばれていたことが分かるエピソードです。このような伝統は、今も島根大学の教育のなかに生き続けていると思います。

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