第127回アシカル講座「木製品からみた3世紀の出雲と大和」を開催しました。

 本日午後は、第127回アシカル講座「木製品からみた3世紀の出雲と大和」を開催しました。この講座は、令和3年度アシカル講座第2ステージ「先史時代の日本列島・朝鮮半島(+北欧)」の最終回になります。今回は、新型コロナ対策のため、ZOOMによるオンラインでの開催となりました。

 本日の講演は、鈴木裕明先生(奈良県立橿原考古学研究所 調査課長)から、3世紀(弥生時代の終わりから古墳時代の初め頃)の遺跡から出土した木製品からみた出雲と大和の関係についてお話をしていただきました。

 まず、鈴木先生が発掘調査された奈良県天理市乙木・佐保庄(おとぎ・さほのしょう)遺跡についての紹介がありました。この遺跡からは、奈良県の地元の土器に混じって、外来系の土器が16.4%出土しており、そのうち山陰系土器が半数近くを占めているそうです。山陰から奈良盆地に人が土器を持って移動したか、山陰の人が移住して現地で土器を生産・消費したことが窺えます。

 この遺跡で注目されるのは、非常に精巧で複雑な造形の木製品が多数出土していることです。なかでも、「翳(さしば)形木製品」と呼ばれる高松塚古墳壁画にも描かれた行事の軍配に似た団扇状の製品や、「刳物腰掛」という椅子などが特筆されます。

 こうした特徴的な木製品は、主に奈良盆地や北陸・出雲に分布しています。このほか、花弁高杯や透文高杯と呼ばれる装飾性の高い木製高杯も山陰・北陸・奈良盆地などに分布しているようです。こうしたことから山陰の木器文化が北陸に伝播し、さらに大和盆地に伝わった可能性が考えられています。大和盆地に伝わったこうした木器文化は、大和王権の祭儀のアイテムとして受容・確立されたのではないかとも推定されます。一方で出雲の祭祀や木器文化が大和に直接伝わった可能性もあるようです。

 遺跡から出土する遺物には土器が多くを占めますが、残存しにくい木製品も様々な興味深い情報を与えてくれることが改めて理解できた講座となりました。

 アシカル講座は、来年度から新しいシリーズ「学びあれば憂いなし!山陰の自然災害」を予定しています。引き続きよろしくお願い致します。

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