第83回ミュージアム講座「出土文字資料からみた『古代出雲』 -墨書・刻書土器を中心に-」(兼:まつえ市民大学連携講座・島根大学COC事業)を開催しました。

 本日は、第83回ミュージアム講座「出土文字資料からみた『古代出雲』 -墨書・刻書土器を中心に-」(兼:まつえ市民大学連携講座・島根大学COC事業)を開催しました。

 この講座は、島根大学古代出雲プロジェクトセンターのメンバーがリレー形式で講義する、平成27年度島根大学ミュージアム市民講座第2ステージ「遺跡から探る『古代出雲』の成り立ち」の第2弾です。

 今回は、高橋周先生(出雲弥生の森博物館専門研究員)が講師を務め、出雲の古代遺跡から出土する墨書・刻書土器についてのお話をされました。

 「墨書土器」は、墨で文字が書かれた土器、「刻書土器」は、文字が刻まれた土器のことで、出雲国(島根県東部)では、これまでに、68遺跡から、それぞれ1671点、278点が出土しています。特に出土数が多い遺跡は、青木遺跡(出雲市東林木町)、出雲国府跡(松江市)、蛇喰遺跡(松江市玉湯町)、鹿蔵山遺跡(出雲市大社町)、築山遺跡(出雲市上塩冶町)などです。

 これらの遺跡から見つかった文字がある土器から様々な情報が分かります。例えば、出雲国府跡から見つかった墨書土器には、別の郡である「出雲郡」の地名が書かれたものが見られます。すなわち、離れた場所にあった土器が国府にもたらされたわけです。

 また、「蘇」と書かれた土器が、神庭丘陵北遺跡(出雲市斐川町)で見つかっています。蘇とは、牛乳から作った、古代のチーズのような食品です。興味深いことに、この遺跡の近くにある西谷遺跡(出雲市斐川町)では、奈良時代の牛の足跡が見つかっています。どうやらこの一帯には、古代の「牧」があり、牛が飼育されていたようです。そして、そこで絞った牛乳から「蘇」が作られていたのかもしれません。

 講座では、このほかにも、土器に書かれた文字から、様々なことが分かる事例を解説され、参加された方々は興味深く聴講されていました。また、実際に出雲市の遺跡から出土した墨書土器・刻書土器を手に持つ機会にも恵まれ、どこに文字があるのか、皆さん熱心に観察されていました。

次回の講座は、「出雲国府と出雲国誕生」(12/5)です。引き続きよろしくお願い致します。

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