本日午後は、第125回アシカル講座「『伝世鏡論』再考」を開催しました。この講座は、令和3年度アシカル講座第2ステージ「先史時代の日本列島・朝鮮半島(+北欧)」の第3弾になります。
今回は、岩本崇先生(島根大学法文学部 准教授・総合博物館 兼任研究員)に講師を務めていただき、古墳時代に伝世された銅鏡について解説していただきました。
はじめに古墳時代の銅鏡には、中国大陸からもたらされた「中国鏡」、日本で製作された「倭鏡」があること、縁が断面三角形になっている「三角縁神獣鏡」の特徴などについて解説がありました。
次に本題の「伝世鏡」についての解説がありました。「伝世鏡」とは、製作されてから、何世代かの間、伝えられたのちに古墳に副葬された銅鏡のことを言います。この「伝世鏡」については様々な研究課題がありますが、第1は、銅鏡が日本にもたらされてから日本の中で伝世されたのか?、中国で伝世されていたものが後の時代に日本にもたらされたのか?、といった伝世場所の問題があります。第2は、伝世された証拠とされる「手磨れ」といわれる文様が不鮮明な銅鏡は、本当に長年使用されて磨滅したものなのか?、という議論もあります。
岩本先生は、様々な銅鏡の文様の鮮明度や加工痕を詳細に観察した結果、「手磨れ」といわれる文様が不鮮明な銅鏡は、意図的に研磨されたり、短期間のうちに磨滅したりした結果である可能性を指摘されました。また、古墳時代前期中葉の古墳から出土する銅鏡には、それよりも古い時期に製作された後漢後期(2世紀代)のものが多く副葬されている傾向があることや、こうした銅鏡の観察結果から、中国大陸で伝世されたのちに日本にもたらされた可能性があるという説明がありました。その一方で、日本の中で伝世された銅鏡も、ある程度は存在しているようです。
このように問題は複雑ですが、ひとつひとつの資料を丹念に観察するという考古学の手法に基づいて、仮説を立証していくことが大切なようです。
次回、第126回アシカル講座は、「弥生・原三国時代の日韓における副葬水晶玉について」(2/19、新型コロナ対策のためオンライン開催)です。皆様のご参加をお待ちしております。
コメント
コメントを投稿