本日午後、第161回アシカル講座「石見銀山を胚胎する仙山火山の活動・地質・鉱化地域」を開催しました。この講座は、地質学・考古学・歴史学の視点から世界遺産・石見銀山について学ぶ、令和8年度アシカル講座第1ステージ「石見学V ~ 発見499年!世界遺産・石見銀山を学びなおす」の第3弾です。
今回は、亀井淳志先生(島根大学学術研究院 環境システム科学系 教授)にご出講いただき、地質学的視点からみた石見銀山について解説していただきました。
石見銀山がある「仙山(せんのやま)」は、約220~180万年前頃の火山噴出物からなっています。仙山の地下には、西部に分布する銀や銅を含んだ「永久鉱床(約107万年前)」と、東部に分布する銀に富んだ「福石鉱床(約144万年前)」が存在しています。
亀井先生らの研究グループは、仙山を徹底的に現地踏査し、岩相の分布を把握されました。その結果、石見銀山の間歩(銀などを採掘した坑道)の分布と凝灰角礫岩(粗い礫が沢山つまる岩石)の分布とが重なることが分かってきました。また、許可を得てこれらの凝灰角礫岩を化学分析した結果、熱水活動による変質が確認されました。こうしたことから、石見銀山の鉱床は、地下の鉱化溶液(金属が溶けた熱水)が上昇して岩の細かい隙間や割れ目などに浸透し、溶液に含まれていた銀などが沈殿することで形成されたことが検証されました。この銀鉱床の形成過程は、特に、福石鉱床で重要なものとなります(永久鉱床は、大きな岩脈の形での鉱化作用が多いです)。
また、現在もなお解明されていない大きな問題として、「銀はどこからもたらされたのか」という謎があります。この点について、一つの仮説が提案されました。今回の化学分析により、仙山は、沈み込んだ海洋プレートが直接溶融して生じたマグマが噴出した「アダカイト質火山」と呼ばれる特殊なタイプの火山であることが明確となりました。アダカイト質マグマの形成過程では、海洋プレート由来の金・銀・銅などの金属元素が溶け出し、それらが熱水によって運搬・濃集されることで大規模な鉱床が形成されることが世界各地で知られています。このため、仙山のアダカイト質マグマとしての活動が、石見銀山に銀を供給した一つの可能性として大事になるかも知れないというお話しです。
ただし、アダカイト質火山に伴う鉱床として一般的なタイプは「斑岩銅鉱床」と呼ばれるものであるのに対し、石見銀山は日本海側のグリーンタフ地域と呼ばれる部分に多い「浅熱水型鉱床」というタイプです。すなわち、鉱床の「形」が異なります。そのため、アダカイト質マグマ活動と浅熱水型の銀鉱床形成との関連をどのように結びつけることができるのかが、今後の重要な検討課題となります。この様な研究が進めば、石見銀山の銀の起源という長年の謎に、より明確な答えが与えられることになります。
講座終了後には、聴講者から、「石見銀山にはまだ銀鉱石が残っているのか?」「日本海側に分布するグリーンタフも同じような要因で形成されたものか?」「佐渡島の金鉱脈についても教えてほしい」などと、多くの質問が熱心に出されていました。
次回のアシカル講座は、「16世紀の石見銀山」【9/12】です。皆様のご参加をお待ちしています。

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